貧血
貧血とは,赤血球中の酸素を運搬する役割のヘモグロビン(Hb)の濃度が低くなった状態をいいます。小児および妊婦ではHb濃度 11g/dl以上、思春期および成人女性では12g/dl以上、成人男性では13g/dl以上が目安とされています。一方、高齢者においては悪性腫瘍、感染症、膠原病などの背景や多剤服用歴もあることから、Hb 濃度11g/dlと成人よりやや低めになります。
症状
慢性の貧血の場合、Hb濃度が 8~9g/dlくらいまでは無症状の場合があります。しかし、7g/dl 以下になると頭痛、耳鳴り、めまい、倦怠感、口角炎、心雑音などを認め、6g/dl以下が持続すると心不全症状を呈することが多くなります。
原因
鉄やビタミンB12、葉酸などの栄養不足によって生じる貧血は最も多く、日本人の女性の約10%が鉄欠乏性貧血です。亜鉛や銅などの微量元素不足による貧血は長期にわたって経口栄養摂取が不可能な場合や透析例においては注意が必要となります。
間接リウマチなどの慢性炎症や悪性腫瘍などでは鉄の利用障害がおこり貧血となります。
骨髄にある造血幹細胞が少なることで赤血球がつくられなくなる病気は再生不良性貧血と言われますが、白血病や骨髄線維症、癌の骨髄転移によっても赤血球がつくられなくなり貧血となります。
一方で、血管の中で血液が破壊されるため起こる貧血を溶血性貧血といいます。先天性のものは遺伝性球状赤血球症やサラセミア、後天性のものは自己免疫性溶血性貧血や発作性夜間へモグロビン尿症などがあります。
その他腎障害、肝障害、内分泌疾患、急性出血などでも貧血を呈することがあります。
診断
貧血は成因、赤血球指数や形態、そして臨床像によって診断されます。血液検査では血球検査に加え、網赤血球数、血清鉄、総鉄結合能(total iron binding capacity:TIBC)または不飽和鉄結合能(unsaturated iron binding capacity:UIBC)、フェリチン、LDH、間接ビリルビン、葉酸、ビタミンB12、CRP、腎および肝機能検査などを行います。消化管出血が疑わる場合は内視鏡検査やCT検査を施行し、造血異常が疑われる場合は骨髄穿刺を行います。
治療
鉄や葉酸、ビタミンB12などの不足があれば補充を行うことで貧血の改善を認めます。腎性貧血の場合はエリスロポエチン製剤の注射を行います。また、急激に進行する貧血や高度の貧血(通常Hb 6g/dl以下)となれば輸血が必要なこともあります。
また、当院では骨髄性の血液疾患が疑われる場合は血液内科専門病院へ、不正出血が原因と考えられる場合は婦人科へ紹介させていただいております。